緊急事態宣言の次の日

毎年4月17日は、当山の春季大般若会。また毎月17日が観音講の恒規法要でもあり、例年だと早朝から夕方まで檀信徒の方が境内を行き来されています。

でも今年は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の流行に伴う緊急事態宣言が全国に対象拡大された次の日だったこともあり、静かな4月17日の朝明けとなりました。おそらく、私が生まれてからも初めてのことです。

緊急事態宣言は出されましたが、向かい側の建機レンタル会社はいつも通り営業されているようですし、車の往来もいつも通り。毎朝どこかに自転車で出かける近所のおばさんも、いつもほぼ同じ時間に山門前を通り過ぎたのも、いつもの光景。

朝から息子と、ゆっくり戯れ合う時間もあって、少し豊かな気持ちに。

初めて息子に写真を撮ってもらいました。上手な撮り方、これから覚えていこうね。

午前10時からは、観音堂恒規法要のお勤め。先月同様、一般講員の方は参拝止めでしたが、世話役の方がお二人、参列して下さいました。

お墓参りも、いつもの方がいつも通りにお参りに来られていました。

いつもと変わらない日暮らしだけど、いつもと違う4月17日。なんだか不思議な光景です。

大般若に随喜される組寺の僧侶の方に差し上げるはずだった手土産。


一般の参詣は1ヶ月以上前に中止が決定していましたが、防疫予防を徹底した上で、衆僧と総代世話人で勤めるつもりでした。

しかし、4月9日に松江市で初めて感染事例が報告され、その時点で参詣は責任役員3名のみに縮小。その後動向を見守っていましたが、松江市のクラスター感染で、毎日感染者が少しずつ増えていきます。

15日、いつもは午前中に配信される松江市のLINEで、初めてPCR検査で陽性ゼロが報告され、少しホッとしたところ、この日に初めて、午後もLINEが配信され、陽性1名の報告。


「もう、これはダメだ」

この段階で、私一人で勤めることを決め、組寺と護持会長さんに伝えました。すると、護持会長さんが「責任役員はお参りします」と言って下さいました。

しかし、前日の緊急事態宣言で、責任役員もお参りを見合わせることに。


恒規法要は寺檀にとって「不要」の勤めではない、何らかの形で厳修できないか。

ギリギリまで模索してきましたが、前日になって私も完全にギブアップ。結局、私と家族でお勤めすることに。

午後2時の打ち出し。

このような状況にも関わらず、篤信者の方お二人が、お参りに駆けつけて下さいました。

少し意外でしたが、その分、そのお気持ちが本当に有り難かったです。

洒水には、次亜塩素酸水を混ぜて、道場と国土を除菌荘厳。


法要中、祈祷太鼓が、なぜか読経の拍子と合いません。

「あれ?」と思って何とか合わせようとしましたが、益々合わないどころか、そのことに気が取られて、肝心のお経もとんでしまい、グダグダ。

結局祈祷太鼓を打たずに読経。こんなことは初めてです。

自分では気付かないふりをしていましたが、心中は不安と動揺だらけでこの日を迎えたのでしょう。


色々ありましたが、おかげさまで、恒規法要の大般若会を、途切らせることなくお勤めできました。


祈祷太鼓でダダ漏れた不安は、実は何年も前から抱えていたものでした。

恒規法要や観音講の札打ちへのお参りの数が年々減少し、少子高齢化、地縁や生活習慣の変化が原因とは思いながら、妙策を打てずにいました。

いずれ、こういった行事の催行ができなくなるかもしれない。でもそれは、15年とか20年くらい先のことだと、漠然と考えていました。


それが、このコロナ禍で十何年も前倒しになって突然現実になったことに、動揺していたんだと思います。

アフターコロナに関わらず、これからは、大勢のお参りをアテにした行事はできないかもしれません。

でも、山内の我々が日常を紡いで仏の居場所を守っている限り、たとえ少なくても、そこに日常を重ねてくださる方々の存在があることを、今回、体感することができました。「一箇半箇」ということでしょうか。

これで「コロナによる免疫抗体」、未来のシミュレーションができたと思うことにします。(副住職 記)

宗淵寺/願興寺

島根県松江市にある曹洞宗寺院・臥龍山宗淵寺と、境内に奉祀されている出雲観音霊場第二十三番札所・新美山願興寺からのお知らせや山内行事の報告、さらに住職や寺族、檀信徒の日暮らし、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつづっています。

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