カープファン曰く「藤浪だからこそ」

私は物心ついた時から、生粋のカープファンですが、ここでは他球団の選手のことを書きたいと思います。

27日、プロ野球の阪神タイガースは、所属する3選手がPCR検査の結果、新型コロナウイルスの陽性反応があったことを発表。球団社長がマスコミを前に会見と謝罪をしました。
それに先立って、マスコミでは藤浪晋太郎選手が新型コロナウイルスに感染した、との報道がありました。

「コーヒーもワインも味がしない」とチームドクターに相談。自らネットで調べて、海外で報告されている感染の初期段階に似ていたことから、複数の病院で検査。その結果、感染が判明したそうです。

いち早く実名が公表されたのは藤浪選手自身の希望だった、という報道もあります。



これに対して、ダルビッシュ有選手がツイッターで、
情報収集している証拠やし、自分の身体に敏感な証拠
と評価しています。


また、広島東洋カープの中心選手で、藤浪選手と同い年の鈴木誠也選手は、
「阪神の選手が練習できない中、僕たちが(シーズンに向けた調整を)やっていいのかという思いもあります」
と、藤浪選手や阪神球団を慮ってコメント。

カープOBで、ご自身も白血病で闘病生活中の北別府学氏も、自身のブログで
「運が悪いと思うなよ。申し訳ないと思うなよ」
と、エールを送りました。
北別府氏のブログは、この報道が出てすぐ更新されたもので、私が知る限りでは、球界関係者の中で最も早く、かつ最も真摯に感じるものでした。

にも関わらず、さっそく球団社長が「謝罪」していたのを見て、少し残念にも思いましたが、日本社会の処世としては致し方ないか、とも思いました。




さて。
藤浪選手は、阪神ファンにとっては「特別」な選手だと思います。

高卒入団で即二桁勝利。その後も数年間は素晴らしい成績を残しました。
ファンは、近い将来、藤浪選手が球界のエースになると信じて疑わなかったでしょう。

しかし近年は「イップス」も疑われるほどの制球難となり、死球を恐れて右バッターを打席に立たせないチームもあるほどでした。
カープの選手もずいぶん「被害」にあっていますが、2015年には黒田博樹選手に2球続けて頭部への暴投。ブチギレされたこともありました。
一説には、この一件でのトラウマがイップスの原因になった、とも囁かれています。

一方で、2017年には大瀬良選手に死球を与えるも、「ぐう聖」大瀬良選手が「大丈夫」と合図する「神対応」もありました。

正に、アメとムチ。
イップスの真相は分かりませんが、少なくともここ数年の藤浪選手は、大きな期待を受けながら、成績の上ではその期待を大きく裏切ってきた、と言わざるを得ません。球場でのファンからの野次も相当なものがあったと聞きます。

そのせいか、最近は、マウンドでもどこか所在なく不安げな表情のように見えました。





一時、カープからのFA加入が続いた時期に、阪神ファンが、
「カープは阪神の2軍」
と公言して憚らない時期があり、これに憤慨して阪神が嫌いになったカープファンが多かったのですが、私は藤浪選手だけは嫌いになれませんでした。
それは、藤浪選手が2年目のオフシーズン、前田健太選手の自主トレに、カープ以外の選手では唯一、志願して参加したことがあったからです。

当時の藤浪選手は正に跳ぶ鳥を落とす勢い。しかもこの年、カープ戦は6つも勝ち星を上げていました。
当時の前田選手は球界を代表する投手ではありましたが、更なる向上を目指すため、カープを選んで単身で出稽古に来たことに、私は意外に思いながらも、感心して拍手を送りたい気分でした。
明くるシーズンに、藤浪選手は自己最高の成績を残し、前田選手と沢村賞選考を競いました。

実は、この自主トレには大瀬良選手も参加しており、その縁もあって、先の「神対応」となったわけです。
「チーム前田」での自主トレをした2015年をピークに、藤浪選手の成績は下降していきます。
昨年は1軍登板はわずか1試合で、プロ入り初の未勝利。まさに「落ちるところまで落ちた」と言えます。

正直いうと、今回のニュースを見た第一印象は、
「正に、泣きっ面に蜂だな…」
でした。

しかし、今回藤浪選手が迅速に検査して罹患を公表したことが、高い評価を得ました。
実際に、それまであまり伝わってなかった「嗅覚障害」というワードを認知させたことは大きかったのではないでしょうか。

実際に、いつもは辛口でならす球界のご意見番も、喝!を出さずに
「明日は我が身、注意しないと」
とコメントしたそうです。
ここからは、私の少しうがった見方となりますが、藤浪選手は生来の気質だけでなく、近年の成績の低下で、「人間力」が鍛えられたのではないでしょうか。
もし成績が青天井だったら、藤浪選手は早くシーズンを迎えたかったでしょうし、高名や既得権に安住して、ここまでの対応ができていなかったように思うのです。

一応、外出自粛の必要性が叫ばれる中の会食が原因であり、ただでさえ開幕が延期になった上に、球界の活動全体の停滞につながりかねず、批判にさらされることも予想されたと思います。
しかし彼は冷静に情報を精査し、適切に行動して、大局を見た善後策を取った。なかなかできることではありません。
「失敗した者」の強さと謙虚さと感じるのです。

かつてない災厄には、それまでの常識や地位は通用しない。
強い自粛ムードの中、仮に社会活動によって罹患した者がいた場合、その者の批判や差別が起こりかねない状況で、藤浪選手は最善の前例を残したと言えます。

藤浪選手らのくれぐれも早いご回復を祈念し、ぜひカープの好敵手となって頂きたいと思います。
(副住職 記)

宗淵寺/願興寺

島根県松江市にある曹洞宗寺院・臥龍山宗淵寺と、境内に奉祀されている出雲観音霊場第二十三番札所・新美山願興寺からのお知らせや山内行事の報告、さらに住職や寺族、檀信徒の日暮らし、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつづっています。

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